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日記

歯と髪

・コンプレックスは誰にでも一つや二つあるものだけど、例外なく僕にも二つある。一つは前歯。僕の顔を見たことがある人なら、違和感を感じたことがあるかもしれないが僕の前歯は人よりほんの少しだけ肥大化してる。肥大化しているというより突き出てると言ったほうが正しいのだが。何故前歯だけこんなに突き出てるのか、遡ると幼稚園まで遡る。

トランポリンやブランコや滑り台が大好きだった僕は毎日のように遊具で遊んでいた。ある日、滑り台を顔から滑ったか何かで前歯を大きく傷つけた。幼稚園の年中くらいだったため、まだ恐らく乳歯だったがそれが原因かは知らないが前歯二本を無理やり引き抜くことになった。未だに覚えている、家の近くの歯医者に父親と二人で向かい、椅子に座らされわけが分からないまま麻酔を打たれペンチで引き抜かれたことを。僕は泣きながら父親に縋り付いた。父親は笑いながら僕を押さえつけていたこともずっと忘れない。その後永久歯が生えてきたが、その永久歯が生えてから今までずっと自己主張し続けている。そのせいか人を見るときはまず歯を見てしまう。「あ、こいつ俺と同じような歯だぞ。仲間だ」と思ったり、「こいつの前歯自己主張してないぞ、敵だ、殺せ!」と心の中で叫んだり。十中八九会う人みんな歯並びがイイからとても羨ましい。僕はこの歯のおかげでひきつった笑顔でしか写真を撮れなくなってしまったのだ。時代が進んで痛くない方法で前歯を引っ込ませる手術ができるのならばぜひやりたい。

 

コンプレックスの二つ目は髪の毛だ。

僕はあまり髪にはお金をかけないタイプで、いつも駅前のカット1800円の美容院で切ってもらっている。ここの美容院、雨の日は300円引きだったりポイントがたまると1000円引きで切ってくれるのでとても嬉しい。何故髪にそこまでお金をかけないのかというと、中学3年せいから高校2年生あたりまで親の紹介でカット5000円くらいの美容院に行った。そこまで高くはないものの、そこらへんの年齢にはとても高く感じる値段帯だしある程度の期待はするもの。モテない僕は床屋を卒業し初めて美容院デビューをしたときとてもワクワクした。「美容院」という言葉の響きもなんだか一歩大人になった気がしてもしかしてこれでカッコよくなれるのかも?と中学生らしい淡い思いを抱きながら入店した。コミュ障の僕はどうカットするかと聞かれて「いや…まぁ…こう…自然な感じで…」とお願いした。カット中も話を振られても「まぁ…ははっ…そうですね…」としか答えられず苦痛でしかなかった。いよいよカットも終り、初めてワックスも付けられワクワクしながら鏡を見て絶句した。頭にワカメを乗っけたような髪型をした老けづらの中学生がそこにいた。それ以来、カットの時には必ず自分の要望を伝えるようにした。できるだけ写真を見せたりもしたが出来栄えはいつも通りだった。「こんな感じでダイジョウブですか?」と全然大丈夫じゃない髪型を見せられながら聞かれ「はい!ありがとうございます!」と答え家に帰って「下手くそ!!!それでもプロかよ!!!!」と泣き叫びながら自分で髪を普通のハサミで切ったこともあった。

そんなこともあって、今はもう髪型にはこだわらないし何も期待もしない。ハリネズミみたいなとげとげの今どきの髪型にしたいと大学に入ってから思い、恥を捨て頼んでみたらヘルメットを被されたような髪型にされたりしてトドメをさされた。恐らくこれから一生自分の好みの髪型には出来ないのかと思うと悲しくなるが、1800円で切れるならいっかと安さに惹かれて髪を短くすることだけを考えて今の美容院に通っている。

 

髪繋がりでそういえば高校2年生の夏、坊主にしたことがあった。

何故坊主にしたのかよく覚えてないが、仲の良かった友達二人についてきてもらい駅の中にある1000円カットで刈ってもらった。粋なことに、真ん中からいきなりバリカンを入れられ北斗の拳の雑魚キャラみたいな姿になったのを見た瞬間は自分でも笑いを堪えるのが大変だった。この笑いを共有しようと思い、お店の外で見ている友達に満面の笑みで振りむいたら誰もおらず、順番待ちをしているおっさんと目が合っただけだった。世紀末な髪型をした老け顔高校生が満面の笑みを自分に見せてきたおっさんは訳が分からなかっただろう。

坊主姿を母親に見せたら「あんた何やったの!!!!!」と怒られ、弟に見せたら「兄ちゃん…」と憐みの目を向けられたのも今となってはいい思い出だと思う。

 

何はともあれ、コンプレックスを抱きながらも人間プライドさえ捨てれば生きていけるから、楽な生き物だと思う。